ときめキッス

主に好きな映画のメモ。ネタバレ注意。

映画『いまを生きる』のニールやトッドがもし、セクシュアルマイノリティだったら…?

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ロビン・ウィリアムズ主演、1989年の青春映画『いまを生きる』(原題 Dead Poets Society) をご覧になったことがあるでしょうか。

ラストに関わる重大なネタバレをしていますので未試聴の方はページを閉じるか、レンタルでもオンラインでもいいので映画を観てから戻ってきてください♡

キーティング先生の名言などは出尽くしていると思うので、私が書きたいのはニールについてです。

この記事には下世話な妄想を含みますので閲覧には注意してくださいね~!

言いたいことが言えなかったニール

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作中の演劇で主役を演じ、父親が決めた進路(医者)よりも自分のやりたいこと(お芝居)を見つけたニールは、いい子症候群で父親に逆らえず、自分の言いたいことを言えないままモヤモヤしています。思いを「理解」してもらうどころか、「解放」することすら出来ない状態。これは、LGBTQ+(性的少数者/セクシュアルマイノリティ)における、クローゼット(カミングアウトしていない、または出来ない状態)と少し似ていると思いませんか?言いたくても言えない。言ったところで周りに何を言われるかわからない。信頼している人にわかってほしい。わかってくれなくとも、伝えるだけでも伝えたい。

もしニールがゲイだったらどうしていたか

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ニールが自分で決めた進路や人生とセクシュアルマイノリティを一緒にするなと思われるかもしれませんが、ニールがゲイだと仮定して、終盤で父親へ思いを伝えようとしたシーンでニールはカミングアウトを出来たでしょうか?父親に「お前の言いたいことはなんだ?ほら言ってみろ!」と高圧的に言われ、同じように「何もない」、と言いたいことを飲み込み、ほぼ同じ結末になる可能性が高いように思います。

少し違うところは、ニールにとってはお芝居がすべてであり、「明日から陸軍学校へ転校し、ハーバードに行って医者になれ」、と10年プランで言われたらそりゃもう、逃げ道を完全に断たれたようなものです。明日からお前は異性愛者になれ、と言われることはおそらくないですよね。だからといって、カミングアウト後に死を選ぶ可能性がゼロではなく、その選択をする人が実際にいます。

自分の中でモヤモヤしていたものが晴れ、人生が輝き始めた瞬間、信頼したいはずの身内からズシーンとフタをされたような気持ち。カミングアウトをしなくても生きていくことは出来ますし、勉強や仕事の進路を変えても生きていけます。しかし、否定されたり挫折したりすると、そこで目の前が真っ暗になって、人生がストップしてしまったような気になるんですよね。その気持ち、すごくわかります。

 

ニールとトッドのゲイ説

ところで、海外のサイトを見ていると、ニールはもしかしてゲイだったのではないか?などと昔からずっと考察(そして妄想)されています。そしてイーサン・ホーク演じるトッドも、彼自身で気付いてはいないけれどゲイもしくはバイなのでは?と思えます。想像と仮説に過ぎませんが、クィア解釈が可能なのです。

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転校してきて不安な状態の中、ニールみたいなどこにでも連れて行ってくれるような陽キャに優しくされたらそりゃ惚れますよね~!?お城から連れ出してくれる王子様タイプ。しかしトッドは性的なことや自身のセクシュアリティを自覚するまでいかないくらいにとんでもなくピュアで、一般の思春期男子のような雰囲気はあまり見られません。転校前に女の子に恋をしていたとも想像しがたいです。

そしてカミングアウトまで非常に時間がかかりそうなタイプというか、自分のことに気付くまでに時間がかかるタイプだと思います。気になったことはすぐにやってみるタイプのニールとは正反対。トッドは他の生徒に対してはそこまで心を開いてなさそうですし、ニールだけが心の拠りどころで、ニールセクシュアルといったところでしょうか。

 

死せる詩人クラブのメンバーであるノックスは女の子に恋をしていて、チャーリー(ヌワンダ)はクラブの集会に女の子を連れて来たり、「この学院に女の子を入れましょう!」とか言ったりするぐらいなのでおそらくヘテロではないかな?すごく個人的ですが、チャーリーは「好きになったら全員抱く」みたいなパンセク(タチ)だと嬉しいです。

集会で他のメンバーが女の子と話す中、ニールやトッドはあまり女性に興味がなさそうに見えました。男子校ノリについてはよくわかりませんが、同性の集まるコミュニティに急に異性が入ってくると、なにやら空気が変わる感じが正直ありますよね。その一瞬の嫌悪によるものなのかどうかはわかりません。

世界から隔絶されたかのような絆

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ニールとトッドは、彼らがクラブの他のメンバーに対して持つ感情とは別の、なにか特別な感情をお互いに抱いていて、周りが僕らをゲイと言っても別に構わない、というレベルの深いところで繋がっているようです。彼らが自覚しなくともプラトニックに両想いだったのではないでしょうか。ニールがいなくなった時のトッドの悲しみは、元々ニールをよく知っていた他のメンバーたちとは明らかに違います。

ニールとトッドの会話で好きなシーンは、トッドのもとへ両親からの誕生日プレゼントとして去年と同じデスクセットが届き、屋上に座って落ち込んでいる様子のトッド、そこへニールが「これ良いじゃん!こんな良いデスクセットがあれば野球ボールだってフットボールだっていらない。僕がデスクセットを2回買うことがあれば絶対にこれを買う、2回とも。」と不自然に褒めちぎり、続けて「ほら、この形、なんか空気力学的じゃない?わかる?このデスクセット飛びたがってるよ。世界初の空飛ぶデスクセットだ!」と言ってトッドに渡し、トッドは屋上からデスクセットを投げ飛ばす。そして2人が笑い合う。ニール「心配すんなよ。どうせ来年またもらえるって」ズキューンじゃないですかコレ。カッコイイし、面白いし、これはトッドもさすがに惚れる。落ち込んでいるときに自分を笑わせ元気づけようとしてくれる姿、惚れるしかないじゃん~!? 

※ちなみにデスクセットとは、ペン、ペン立て、マットなどのステーショナリーセットのようなものです。まあ、学生へのプレゼントには最適だとは思いますけど2年連続はちょっと…ね。

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(引用元: WOOD ARTS UNIVERSE)

 
ここまで書いて分かると思いますが、BL好きの方にはたいへんオススメの映画となっております。男子校とか女子校モノっていいですよね~。しかも全寮制って夢があります。私は共学出身で何も知らないので、妄想の対象にしてしまい申し訳ありません。すてきな男子校映画・女子校映画があれば教えてください。男子校や女子校において同性に惹かれるのは思春期特有の一過性のもの、と言う声をたまに聞きますが、そんな声は聞き流してどんどん恋しましょう。自分の「好き」を否定してあげないでくださいね。

 

親の言うことがすべてじゃない

LGBTQとは離れますが、2009年のインド映画『きっと、うまくいく』の中で、ニールと同じように父親が厳しく、進路と人生を決められている大学生の男の子がいます。母親は一歩下がって沈黙、という図もほぼ同じです。

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(引用元: amazon)


その大学生も、決められた道とは別の、自分のやりたいことがあります。しかし「父が許さない」、と諦める一歩手前。父親と面と向かって話し合いをし、「一度でいいから僕のわがままを許してくれ」と懇願すると、父親は理解し、「自分の人生を生きなさい」と言います。ニールも父親からのこの言葉を求めていたはずなのにそれは叶わず、あんな結末になってしまったのがとても辛いです。

『きっと、うまくいく』で、非常に教育に厳しい学長が出てくるのですが、学長の息子は入試に3度失敗し電車に飛び込んで亡くなっています。圧力によって追い込まれたためだと思われますが、学長はただの事故だと言い張ります。そんな学長でも、娘(亡くなった息子の姉)が出産して孫が生まれた時には「お前は好きなものになれ!」と自由に人生を生きることを望んでいます。学長の息子とニールは同じように追い込まれ、死を選択しました。なぜ彼らは死ななければならなかったのか。ニールの父親を説得させるためには何が必要だったのでしょうか。

決められた道から外れることはイコール死につながるわけではありません。私も、〇〇ができなかったら死ぬしかない、と考えることがよくあります。でも、できなくてもいいんですよ。道から外れても、また別の場所で生きていく方法はたくさんあります。自分は閉鎖的な空間にいるのだ、と思いすぎないようにしてください。記事タイトルから大きくズレてしまって申し訳ないです。

 

トッドたちは今?

『いまを生きる』はキーティング先生が教室を出て映画が終わります。後日談的なものが一切描かれておらず、「良い先生だった…」という雰囲気でエンディングを迎えますが、生徒たちはその後どうなったんでしょうか!?!?気になって仕方ないのですが!?

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トッドはニールのことばかり考えすぎて自分を追い詰めたりしてない?ニールロスでうつになったりしてない?ニールより好きな人は今後たぶん現れないと思うしこの先の人生ずっとニールのことが頭の隅っこにあるだろうけど、1人になった寮の部屋でどう過ごしてる?ちゃんとご飯食べてる?放校処分にされたチャーリーは何して生きてる?女の子と遊んでる?

もうほんとトッドに至っては、過保護にならざるを得ないです。映画をご覧になったならわかりますよね?どうかトッド、そしてこれから一緒にたくさんの時間を過ごすはずだったニールも、ともに幸せに生きていける世界になりますように。

 

 

 

(DVDジャケット引用元: amazon記事内キャプチャ引用元: YouTube)